Web担当の大里です。今回はかなり趣味的なお話をさせていだきます。
先日「リズと青い鳥」というアニメーション映画を見てきました。
内容は、高校の吹奏楽部を舞台として、フルート奏者とオーボエ奏者である二人の高校三年生女子をメインにストーリーは展開します。親友と思っていた二人の思いが少しづつ噛み合わなくなっていく過程や、音楽的な才能の差に落胆し涙する場面など、驚くほどに繊細で美しく描かれ、静かに感動できる良作品になっています。
当初「おっさんが一人で行っていい映画なのか、、、」とかなり悩みましたが、日本の映画産業に貢献するという無理矢理な理由(間違いではない)を落としどころにして、足を運んだところ、意外にも似たようなおっさんは多く、全くの杞憂に終わりました。
親友との関係や音楽、進路などに悩む卒業を控えた高校生の話ではありますが、物語のテーマは不変のものであって、年配の人が見ても、共感したり懐かしく思い出す場面もあるかと思います。
今回の作品は現代劇であり、恐らく実写で作る事も可能でしょう。
しかしながら、世界的にも認知されている日本のアニメーションが築き上げた数々の表現手法は、実写を凌駕している面も多々あり、特に今回は独特の間合いや少し引いたカメラワークが素晴らしく、言い方は変ですが、実写よりもリアルに迫るものがありました。
今作だけでなく、2016年に話題になった「君の名は」「この世界の片隅に」や御大宮崎駿監督の数々の作品など世界に誇れる日本アニメーションの多くは、CGが多くなったとは言っても核になるのは、手作業による原画制作です。
日本のアニメーション黎明期に目標とし手本としたのが、ディズニーのアニメーションであり、今観ても精緻で美しく見事な作画だと思います。
ところが、原画制作者は職人に通じるものがあってか、技術を伝えて行くのが簡単ではないようで、実際ディズニーは技術の引き継ぎに失敗し、一時期ディズニーのアニメーション分野は低迷します。
逆に日本では、TVアニメーションを軸に技術と才能ある制作者を育んでいき、且つ日本独自の表現なども相まって、いつからか、ジャパニメーションと呼ばれる域に達しました。
その影響力から、これからの主力輸出産業の一つである、日本のコンテンツ産業の一角として期待されるまでになっています。
しかし、日本のアニメーション業界も危機を迎えています。
停滞していたディズニーアニメーションの危機を救ったのはCGアニメーションでした。
CGアニメーションはこれまでの手作業による原画制作に比較して、技術の伝達や作業の共有化も容易になり、制作効率を劇的に改善しました。
「トイストーリー」から始まるピクサー制作のCGアニメーションはディズニーのアニメーション部門を活性化させ「アナと雪の女王」で結実します。
対して、日本のアニメーション現場の多くは今でも手作業が主流です。
制作現場の労働環境は良いとは言えないようで、高校生のアルバイトレベルの低賃金で働いているアニメーターも決して少なくないようです。才能や熱意があっても食べていけないのでは良質なスタッフが育つはずはありません。
今回見た作品でもそうでしたが、スタッフロールに韓国や中国のスタッフ&制作会社が散見されるようになりました。
恐らくは両国の技術レベルが向上し、日本よりも安い賃金で参加されているのではないかと思われます。
つまり、技術の流出が始まっているのです。
永らく日本のお家芸の一つでありましたアニメーションが、韓国や中国にとって代わられる日が来るかもしれません。
だからと言って、ディズニーのようにCGアニメーション完全移行もまた正しいとは思えません。
技術は進歩しますから、この先も絶対とは言えませんが、まだまだCGアニメーションでは、「リズと青い鳥」の中で表現された空気感や美麗な動きを再現する事は難しいと思うからです。
願わくば、日本政府が正しくアニメーション産業を保護、推奨し、今後も素晴らしい作品が生み出され続ける事を一人のファンとして期待しています。