インド旅行から見えてきたもの~悠久の時は何を教えてくれたのか~

本年最後は橋本が担当します。今月初めてインド旅行に出かけて、様々刺激を受けてきましたので、感じ取ったことを記してみました。

インドへは、大手旅行会社の、「ブッダガヤ・ヴァラナシ・アグラ祈りの聖地をめぐる旅8日間」という、仏教、ヒンズー教、イスラム教の著名な聖地を効率よく廻る少々マニアックなツアーに参加しての旅でした。今回記したいことはとても多く、行程ごとに記載すると、とても長くなってしまいますので、まずは、3つの宗教ごとに、主な訪問地を紹介させていただきます。

まず仏教関連ですが、ブッダガヤの「マハーボディー寺院(大菩提寺)」では、ブッダが瞑想の後、悟りを開いた場所といわれている有名な菩提樹もあり、高さ52メートルに及ぶ大塔は畏敬の念を感じさせる存在感でした。あいにく小雨交じりだったですが、仏教第一の聖地といわれるだけに、熱心な仏教徒の祈りを捧げる姿は、時を超えた力を感じ、日が落ちてからは、ライトアップもされ、幻想的な光景には、祈りの聖地の実感を更に味わうことができました。また、悟りを得たブッダが最初の説法を行なった場所、いわば仏教が始まった地ともいえる四大聖地のひとつサールナートは、想像以上に仏教寺院などの遺跡が残っていたことに驚かされました。幸い天候にも恵まれ、穏やかな日差しの中で遠い時への想像をめぐらしましたが、何よりも高さ約43メートルのダーメーク・ストゥーパのボリューム感には圧倒されました。

ダーメーク・ストゥーパ

次にヒンズー教に関しては、インド旅行のひとつのハイライトともいえる、ヒンズー三主神のうちの一人シヴァ神の霊魂が宿る町といわれているヴァナラシー(ベナレス)の、ガンガー(ガンジス河)を体感しました。早朝から小舟に乗って約1時間河を渡るなかで、あいにく曇った朝で日の出は見られなかったですが、すでに沐浴や洗濯をしているほど生活に密着している場所での光景に接し、独特の空気感が体に染み込みました。また、全国のヒンズー教徒が、そこでの火葬と遺灰を流してもらうことを望んでいるという火葬場では、早朝にもかかわらず火葬も始まっており、生と死が日常的につながっている俗と聖が重なる場所という実感を持ちました。さらには、夜の礼拝「アルティ・プージャ」という、火を使った華麗な儀式も荘厳でした。また、デリーでは、ラクシュミーナーラーヤンというヒンズーの寺院へ。歴史は浅いですが、ヒンズーの様々な神様が祀られたヒンズー様式による華麗な寺院で、現地の人々の信仰の場として地域に溶け込んでいる様子を実感できました。

早朝のガンガー

そしてイスラム関連では、まずはアグラにある著名なムガール帝国第5代皇帝シャー・ジャハーンが愛妃ムムターズのために建てたタージ・マハールヘ。イスラム建築でも最高峰といっても過言ではない、白大理石による壮大で優美な霊廟は、流石に素晴らしいとしかいえない魅力ある建物でした。また、ムガール帝国の権力を象徴する巨大な要塞のアグラ城は、外観の武骨さに比して、広大な内部は、もともと宮殿だっただけあって贅沢な空間だったのは意外でした。また、デリーでは、クトゥープ・ミナールというヒンズー様式の残る寺院へ。広大な領域に多くの遺跡が残り、特に高さ72.5メートルにもおよぶ壮大な塔は結構な迫力でした。そして、ムガール帝国第2代皇帝のために建てられたフマユーン廟は、後のタージ・マハール構築をはじめとしたイスラム建築に多大な影響を与えたともいわれますが、ペルシャの影響も残した装飾もあり、なかなか見ごたえがありました。

クトゥープ・ミナール

今回は、もともと学生時代から、ビートルズが影響を受けた場所であり、またブッダの生誕の地でもあるインドには出かけたいと思っており、40年の思いを実現した小旅行でしたが、以下、感じたこと、思ったことを記してみます。

何といっても一番印象に残ったのは、街の持つエネルギーでした。崩れそうな商店や家屋がびっしりと並んだ道路には、自動車、バイク、オートサイクル、人力車、多くの人々、そして平然と牛が行き交い、その強烈な騒音や独特の匂いは五感を刺激し、とても言葉では表現しきれない、まるで異世界に紛れ込んで、内面から覚醒されるような、人間が生きる根源的な力を呼び覚まされた思いでした。

また、生活に染み込んでいる宗教の力の一端は感じ取りました。もちろん短期間に限られた地域だけを垣間見ただけですが、今回は聖地めぐりということもあり、寺院に集う人たちの敬虔な行いの様子や、TV番組にヒンズーの神様が結構出てくることなど、やはり日本とは宗教との距離感の違いを感じました。特に人口の80.5%を占めるヒンズー教が多神教であり、その受容力とダイナミズムが独特のエネルギーを醸し出す土壌となっている感じは、私なりに分かるような気がしました。(ちなみに、ブッダはヒンズー三主神の一人ビシュヌ神の化身のうちの一人に、後から加えられており、それは、仏教への感化を防ぐために行われたという説があることを、今回初めて知りました。)

そして、もちろんその他に、「ここはインドですから」と言って許される時間感覚、食事は本当にカレー風味がベース、空港では国内便でもパスポートが要る、ホテルや大型ショッピングセンターでは身体チェックを受けるなど、やはり日本の常識とは異なることは多く、日々刺激的でした。もちろん今回は全くその一部に触れたに過ぎませんが、人口も面積も日本とは一桁違い、多民族、多宗教、多言語、多文化な国家として、インドは一度行くと結構ハマる人が多いと聞いていたこともありますが、私もその仲間入りをしてしまった感はあります。

それにしても、あのガンガーでの悠久の時の感覚を味わってしまうと、“人生100年時代”といわれるようになったとはいえ、日本での日常は、与えられた本当に限られた時間の中で生きていくという、至極当たり前のことが痛感されました。そして、何よりも今回の一番の収穫は、世界はまだまだ知らないことばかりで、本当に時間を大切にして、謙虚にならなければいけないという、当たり前とも思われることの大切さ、さらには、健康で日々を送ることができて、仕事もできていることのありがたさを、改めてじっくりと考えさせられた機会だったということでした。

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