「個の自立」について考える

今回は橋本が担当させていただきます。
近年人生100年時代という言葉も聞くようになりましたが、長い人生を送ることになったことにより、多くの企業人にとって、セカンドキャリアを含めた「自分の人生、どう生きるか」が、一層重みを増していることは間違いありません。私自身も、自分のキャリアにおける“覚悟”を決めなければいけないことを痛感しております。また、企業も定年延長や再雇用、それに伴う就業規則や賃金規定の見直しなど、さまざまな施策を行わざるを得なくなっております。いずれにしても、先の読めない様々な変化の時代を乗り切るカギとなるのは、「個の自立」と言えることは過言ではないでしょう。
そこで、今回は、企業人がどのようなライフキャリアを描いていくかを考える際に、人生の多くの時間を過ごす「企業と個人の在り方はどうあるべきか」という原点に立ち返ってみたいと思います。

いささか旧聞になりますが、私見では、日本が世界的に評価されていた1980年代の後半頃から、いよいよ自己実現時代の到来という機運が高まって来るも、バブルがはじけるとともに、いつの間にか雲散霧消してしまった印象があります。当時、従来伝統的に不可分であった企業と個人の関係の見直しを促すとともに、社会と個人の新しい関係の樹立をも示唆しました。また、これからの日本および日本企業の変革を実現していくためにも、広く国民レベルで個人の自己革新が求められるとの観点から、その第一歩には、真の意味での「個の自立」が必要となってくると考えておりました。
この個人と企業との関係のあり方に注目し、「新しい個」の確立について、以前私が在籍しておりました富士ゼロックス総合教育研究所(FXLI)が、当時研究レポートを発表しましたが、ここではそのレポートからの引用を中心に紹介させていただきます。

「新しい個」の確立にむけて
これからの時代には、常に新しい価値を創造することのできる人材が必要であり、この能力の育成が個人にとっても企業にとっても、緊急であるとの認識を高めることが必要である。
その、新しい価値を創造していく人間とは、そのコアに「私はこう生きる」という哲学を持ち、そこからにじみ出る迫力があること。しかも『じぶんらしさ』が表現でき、多様な価値観を尊重し、市民感覚があることが大切で、これらを兼ね備えた「新しい個」の育成が急がれる。
FXLIの定義による「新しい個」の概念とは以下の四つである。
①多様な価値観や行動様式が存在することを理解しており、それらと対等にかかわりあうことができる。
②自分の個性をよく知っており、その個性について正しく解り易くまわりに説明できる。
③『自分はこう生きる』という生きる哲学や夢を持っており、その実現のために努力している。
④市民としての良識を持っており、社会に役立つことを実践している。

さらに、ここではFXLIが提唱した「自立人間の条件」を紹介いたします。同社では、「今まで、ありとあらゆる場面で『対決』を避けてきたから、今、不安が膨らんでしまっているということはないだろうか」と問いかけ、「自分と対決して生きることのできる人間」の条件を次のようにあげています。

①自己の意見・主張を持つ
どんな人生を選ぶにしても、自分が主体的に参画して決めたものでなければ、本当の満足感は得られない。

②自己の意見・行動に責任を持つ
自分の人生のすべては自分の責任に帰するものだ。人間はとかくまわりに責任を転嫁したくなるが、転嫁したからといって状況が好転するわけではない。これに対決していくのは、早いほどよいといわれている。

③先見性・自発性・計画性がある
人生には目標のあることが大切である。めざす目標があるこそ、毎日の生活にハリがある。先を見ること、そして計画を立てることが大切。それらを実現するのは、自分の自発性しかない。

④自己と周囲(対人関係、状況)とのギャップに気づくことができる
状況不適応や対人関係のトラブルは、自分と相手との状況に対する認識のズレに気づかないことから始まる。

⑤周囲に対して共感性を持って行動することができる
自己と周囲の関係性を明かにしたうえで、それぞれの持ち味を活かしながら新たな価値創造が出来るような思考、行動につなげる。

ここで提示している五つの条件は、実に30年近く前に提唱されたものですが、立場や条件を超え、そして時代を超え、変化の激しい現代にも通じる指針として「自立人間をめざす」ための重要な示唆となるのではないでしょうか。

おまけ 今月の1枚

機会があって、小京都とも呼ばれる山口市にある瑠璃光寺に行ってきました。ここの国宝五重塔は、プロポーションの美しさから、奈良・法隆寺、京都・醍醐寺の塔と並んで、日本三名塔と呼ばれております。心地良い青空も幸いし、晩秋の日本庭園の中に佇むその秀麗な姿に、時が経つのも忘れて見とれてしまいました。(10月撮影)